セブンパーク天美が、11月17日のグランドオープンに先駆けて11月11日にプレオープンを果たした。同施設は、大阪府の中央を東西に流れる大和川のすぐ南の松原市に誕生した。2年半前に現地を訪れた際は、セブン&アイ出店予定地の看板があるだけの更地だったのが一気に巨大な館となった。近鉄南大阪線の河内天美駅から徒歩約15分、そのため最寄り駅からは100円バスが運行されている。2020年3月に阪神高速の天美インターチェンジができ、ケーズデンキやウエルシアといった量販店がオープンしている。そして、出店地の東側500mにはオリンピックスケートボードで最年少金メダリストの西矢椛選手が活動の拠点としている『スポーツパークまつばら』もある。
「セブンパーク」は関西では初めて聞く名前なので、どこが運営しているのかと思ったがセブン&アイ・ホールディングスだった。敷地面積約67,000㎡、売場面積約45,000㎡、駐車台数約2,100台、テナント数約200店。関西には、同社が運営する商業施設にアリオの3店舗があるが、セブンパークは初めてで全国でも2店舗目である。出店地から北東約7kmにアリオ八尾、南西約10kmにアリオ鳳があり、その中間のドミナント出店となった。
では、アリオと何が違うのか。アリオの名前の由来は、Ariel(アリエル・空気の精)に接続尾「o」をつけ、音感に親しみを込めて名付けている。
一方、セブンパークは地域のお客様に、ショッピング・憩いの場・健康・スポーツ・カルチャー・エンターテイメントのすべてを体験していただきたいという想いを込めてセブン&アイHLDGS.の『park』の名称をつけた。実際に施設を見るとアミューズメント性が高いと感じた。見てワクワクするような店舗だ。それは、外観からも感じることができる。まるでユニバーサルスタジオジャパンに来たかのような壁面で、ショッピングセンターとは思えなかった。なので、初めて行かれる方は立体駐車場ではなく平面駐車場から来店することをオススメする。
ワンフロアの面積は、ららぽーとやイオンモールと比べるとやや狭く感じた。しかし、施設中央にあるアマミスタジアムは1〜3階までの高さがある520インチの大型LEDビジョンが圧巻で、その前には歌唱イベントや子ども達の演舞を披露できるようなスペースがあり、地域の人と一緒に盛り上がれるようになっている。最新設備を導入したTOHOシネマズは10スクリーン・1639席と関西最大級で、プレミアムシートも初導入しており、ゆったりしながら鑑賞できる。
松原市との連携した取り組みもある。市立図書館で借りた本を返却できる「返却ポスト」を設置。そして、館内のデジタルサイネージを活用し、松原市のさまざまな市政情報の発信やまちなか観光の案内などを実施するとしている。
セブン&アイHLDGS.が運営しているので、核店舗はイトーヨーカドーと思いきや、1階の食品スーパーはライフということに驚き、違和感を覚えた。ホームセンターや家電量販店との併設店舗はあっても、商業施設内への出店は珍しい。アリオやイオンモールは、食料品と衣料品売場もワンセットで展開しているが、ここには食料品売場しかなく、衣料品はパシオスをはじめとしたテナントを誘致している。生鮮食品を扱う店舗は、ライフ以外にも魚河岸中與商店や肉の松屋、青果にしだといった専門店もあり、これらも店舗も賑わっている。
1階には、ロフト、無印良品、ニトリデコホームとライバル関係の店舗が近くにまとまってあり、消費者にとっては買い回りしやくなっている。無印良品は野菜を少し販売していたが、関西最大規模の堺北花田店と比較するとどうしても見劣りしてしまう。
注目されているのは、エイベックスが手掛ける関西初出店のGOOD SOUND COFFEEだ。天井から大型スピーカーが7台吊るされており、音に包まれる空間を提供している。
2階は、トイザらス・ベビーザらス、ひごペットフレンドリー、衣料品専門店。ユニクロやジーユーが無いので、少し衣料品店の物足りなさを感じた。全国5店舗目のVS PARKは新感覚のスポーツ施設で、国内最多の34種類のアクティビティを設置している。映像に向かってサッカーボールを蹴るといったテレビ番組で観かけるようなアトラクションを楽しめる。
3階は、ジョーシンやダイソー、マックハウス、namcoのゲームセンター、携帯電話ショップ。レストランやフードコートは各フロアに点在しており、密を防ぐ構成にしたように感じた。
関西には、イオンモール・イオンショッピングセンター・イオンタウンなどのイオン系の大型商業施設は合わせると約90店ある。一方、セブン&アイはイトーヨーカドー東大阪店が2019年に閉店し、関西ではイオンに押され気味だ。10月28日にはイトーヨーカドー加古川店の入るグリーンモール別府がアリオ加古川として再出発した。そして、このセブンパーク天美を起爆剤に関西巻き返しとなるか期待が大きい。
最後に、周辺の競合店を取り上げる。大和川以北のイズミヤスーパーセンター八尾店が10月中旬〜11月12日にかけてスーパーの売場を縮小してココカラファイン・無印良品をテナントに入れてリニューアルした。サンディ松原天美店も10月29日にリニューアルし、周辺の店舗は警戒しているのが感じとれた。また、影響を大きく受ける大和川以南は、既に大型商業施設が数多く立地している。近くには、集客力の高いイオンモール堺北花田やイオンモール堺鉄砲町。9月にオープンしたばかりのビバモール美原南インター、来年にはららぽーと堺(仮称)と数年後にはイオンタウン松原新堂(仮称)と、まだまだ新規出店を控えている。同市内に大型商業施設がゆめニティまつばらとカナートモール松原しか無かったが、人が集まるエリアに変貌を遂げようとしている。近隣の大型商業施設とどう差別化できるか、そして地域に愛されるかが、成功の鍵となりそうだ。これまでは隣接する堺市の勢いに押されていたが、地域活性化の第一歩となったと言えるのではないか。
智