新型コロナによる行動制限のない3年ぶりのゴールデンウィーク。そんなGW初日の4月29日《オアシスタウン吹田SST》の開業をもって、《Suita SST OSAKA》がまちびらきした。
《Suita SST OSAKA》は、パナソニックの推進するサスティナブル・スマートタウン第三弾で、関西初展開の街だ。パナソニック工場跡地を利用し、社会のあるべき姿を提案する街としている。パナソニックをはじめ15社の異業種の民間企業と吹田市が協力して、複合商業施設(オアシスタウン)・ファミリー分譲マンション100戸・シニア分譲マンション126戸・単身者共同住宅73戸・ウェルネス複合施設(サービス付き高齢者向け住宅63戸)・交流公園からなる街をつくりあげた。
スマートタウンがあるのは、北摂エリアの中でも人気の高い吹田市で、最寄り駅はJR岸辺駅だ。岸辺駅のすぐ北側には、吹田操作場跡地の再開発によりできた北大阪健康医療都市(愛称:健都)がある。国立循環器病研究センター(2019年7月)と市立吹田市民病院(2018年12月)が駅前に移転した他に、商業施設のVIERRA岸辺健都や大型マンションも建設された。この《健都》を通過し、北へ10分ほど歩くと、スマートタウンが見えてくる。
この事業は、〈カーボンニュートラルが当たり前の社会〉〈誰もが幸せに生きられるウェルビーイング社会〉を5つのサービスを通して実現するということだ。
① 《Energy》日本初、タウン内の消費電力を実質再生可能エネルギー100%でまかない、街の防災性向上を図り停電のリスクを軽減する。シェアリング機能の先進エネファーム導入し、無駄を無くす。
② 《Security》AIカメラで転倒などの異常を検知し、見守る。
③ 《Mobility》吹田市と姉妹協定にある地方都市との広域交流。電動モビリティ、吹田市と連携してサイクルシェア実証を展開。
④ 《Wellness》IoTを活用し、パーソナルヘルスデータに基づく健康増進・維持を支援。日常の行動をデータ化して、エビデンスに基づくケアの提供。
⑤ 《Community》交流公園を活用して、多世代の交流を促進する。
自然災害が多い昨今、暮らす人に安心を与える街と言える。多世代が暮らす街なので、高齢者と子どもの関わりについても取り組むとしている。そして、先にまちびらきしている《健都》との相互連携も推進していくそうだ。
複合商業施設のオアシスタウンは、阪急オアシスが運営している。2017年7月にオアシスタウン伊丹昆陽(ユニクロ・ジーユー他)、2019年8月にはオアシスタウンキセラ川西(ユニクロ・無印良品・エディオン他)が開業しているが、吹田SSTはサスティナブル・スマートタウンという点で異なると言える。
では、オアシスタウン吹田SSTの紹介をしていこう。1階は、核店舗の阪急オアシスとココカラファインなど。2階はエディオン(4月15日先行オープン)やASICS Sports Complexのスポーツジムの他にクリニックモールも出店している。3階以上は、約380台の駐車場だ。
4月29日はあいにくの雨であったが、阪急オアシスは入場制限をするほどの大盛況で、客層は30~40代の家族連れが多いと感じた。南側入口付近には休憩スペースや“食”にまつわる本を1,500冊以上揃えるこども図書館、乃が美の生食パン(販売は4月29日〜5月1日)、阪急百貨店銘菓日本の味・デパ地下スイーツギフトコーナーがある。近くに病院やシニア向け施設もあるので、百貨店の商品が買えるのは喜ばれるし、阪急ブランドの魅力を感じた。
北側の入口付近は、什器が低く見渡しやすい陳列で、ドライフルーツも販売している。おひさん市では、大阪〜四国・九州原産の有機野菜が並んでおり、健康を意識したラインナップだ。魚・肉・惣菜コーナーは、調理工程が丸見えの対面販売で、顧客にとっても安心感がある。
店内を回遊して気になったのは、『フローズンフィッシュ』と銘打った冷凍した魚を並べたショーケースだ。丸魚の鮮魚も豊富だが、冷凍の切り身も選択肢が多かった。その他には、店内各所に設置してあるカゴ置き台は消費者に優しい店づくりという印象だ。
2階のエディオンは、店内にロボットプログラミング教室を併設している。2020年度からプログラミング学習が必修化になったことで市場規模も拡大予想で、今後を見据えた取り組みだ。
健康面に関しては、関西初の都市型低酸素環境下のトレーニングができるASICS Sports Complexがある。トップアスリートの為のイメージが強かった低酸素トレーニングが、生活習慣病の改善や体脂肪量の減少、さらに血流が増え、肌印象がよくなる効果が見込まれることがわかってきたところに、目をつけた施設だ。他のスポーツジムでは体験できないので、当ジムは試してみる価値はあるのではないか。
周辺の買い物施設については、イズミヤ千里丘店、ららぽーとエキスポシティ、トナリエ南千里アネックス、吹田グリーンプレイス、イオンモール茨木といった集客力の高い大型店舗が多い。《健都》を機に、緊急車両にも対応できるように周辺の道路も整備・拡張された。しかし、依然として府道14号線(大阪高槻京都線)は渋滞が頻発し、JR京都線により商圏が分断される地域の為、食料品・薬・家電・スポーツジム・クリーニングが揃う当施設は、徒歩や自転車を日常使いしている近隣住民にはありがたいに違いない。
最後に、スマートタウンについてはトヨタ自動車も取り組んでいる。超高齢社会の日本は、このような取り組みは課題解決策の一つとも言える。買い物難民の問題、過疎地の孤独化など安心して暮らせる環境。スマートタウンという形で、一つのコミュニティをつくり、環境に配慮した街をつくることは意義のある取り組みだと改めて考えさせられた。個人でできることは微々たることかもしれないが、それが集団になると大きな影響力となる。これまで環境問題に対して無関心であった人も、環境に配慮した街に住むと意識も変わるのではないかと思った。この事例を参考にして、実施する企業・自治体が増えることを期待する。
参考資料:Suita SST OSAKA
智