滋賀県でハトのマークと言えば、「平和堂」を思い浮かべる人は多いのではないだろうか。県外の人には、耳馴染みはないかもしれないが、県民には最も愛されているスーパーと言ってもいいだろう。
1957年「靴とカバン店・平和堂」を創業した後、株式会社平和堂を設立。近畿・東海・北陸に165店(エール2店・丸善7店含む)のうち滋賀県内に83店と県下で最もチェーン展開しているスーパーへと発展した。衣食住が揃う大型ショッピングセンターの「アル・プラザ」、総合スーパーの「平和堂」、食品スーパーの「フレンドマート」と「スーパーフレンド」の看板で営業している。
ここ十数年は県外にも積極的に出店している。大阪府高槻市を例に挙げると、JR高槻駅に直結する「アル・プラザ高槻」は2004年に開店した後、市内に「フレンドマート」を3店オープンしている。まず、駅前出店で認知度を高めてから小型店を集中的に出店させる。市民が、鉄道を利用する際は市内中央を走るJRや阪急電車を利用する特性がある。複数の鉄道が縦横無尽に走っていない高槻市ならではのマーケティング戦略だと感心した。
この「アル・プラザ高槻」で最近変化が見られた。1階の食品売場に「ピピットセルフ」のスマホ端末が60台用意されている。商品をスキャンしながら買い物カゴに入れる仕組みで、会計の待ち時間が短縮できる。また自分のスマホでもアプリをインストールすれば利用可能だ。客にとっては、レジ待ちのストレス軽減、店舗にとってはスタッフの商品スキャンの負担軽減が期待できる。イオンやトライアルでも、セルフスキャン方式を導入する店舗が拡大しているが、平和堂も利用客の多い駅前や郊外の大型店舗では普及していきそうだ。
「ポイ活」なんて言葉も生まれた昨今、大半のスーパーで導入しているポイントカードにも注目したい。平和堂の「HOPカード」は、発行枚数累計400万枚を超えており、滋賀県の人口約140万人、約58万世帯からすると、その多さがわかる。さらに、スマホ用のアプリ「モバイルHOP」の会員も約90万人。食品や住居関連のクーポンも多く発行されている。
また、週2日ほど投函される折込広告には「HOPカード会員様なら」とお得な価格も併記されており、会員になるメリットは大きいと言える。物価高騰が叫ばれる中、少しでも安く購入できるのはありがたい。
《人気歌手を起用》
2022年が創業65年ということで、平和堂のイメージソング「かけっことびっこ」を滋賀県出身の西川貴教氏(T.M.Revolution)に歌唱してもらい店内BGMに起用。昨年3〜12月の期間限定で、毎時24分頃と55分頃に西川氏の歌う平和堂の歌が流れていた。もう館内放送が聞けないと残念に思った方に朗報が飛び込んできた。2023年2月24日〜2024年3月20日まで復活するという。2月24日の折込広告に、復活の案内と「平和堂 特命○○」のYouTubeのQRコードが印字されていた。YouTubeには、西川氏が平和堂の彦根にある本社を訪れ、「特命○○」を受け取る様子が流れている。
復活した店内BGMの放送回数は、毎時24分(一部店舗除く)だけに減っているが、プロ歌手の歌声に思わず耳を傾けてしまう。県民にとっては自然と口ずさむ耳に残るメロディーで、幼少期から平和堂で育った人は大人になっても利用し続けるのだろうと、歴史ある企業の強みを感じた。
《愛される理由》
そんな平和堂は、5つのハトのお約束を掲げている。
①奉仕のハト(お客様へのサービスを第一とします)
②創造のハト(よい品を販売します)
③感謝のハト(お取引先との信用を重んじます)
④友愛のハト(みんなの幸せを築きます)
⑤平和のハト(地域社会のためにつくします)
平和堂財団
創業者の故夏原平次郎氏が、地域の方に感謝し、恩に報いるため私財を寄付し、1989年に設立。各種助成や事業を行い、地域社会の発展に寄与することを目的に活動している。
①教育事業 給付型育英奨学金(返済不要)
②文化事業
③環境事業
④児童福祉事業
県内の他社スーパーが閉店した際に、自治体や商工会議所が平和堂に声を掛け、採算面の不安はありつつもオープンしたこともある。それほど、平和堂は滋賀県にとっては頼りにされている企業と言える。
自店同士が300mという近さの店舗もある一方で、買い物難民にならないように店舗を構えるなど地域に愛される取り組みをしてきた。「食」を支えるだけではなく、平和堂財団の設立、地域に根差した企業だからこそ、滋賀を代表するスーパーに至ったと感じる。
出典: HEIWADO REPORT 2021
智